ジグリングによる保存療法のすすめ
股関節に不安がある・痛みがある、歩くときに肩が揺れているといわれる、腰に痛みを感じ病院に行ったが腰に特に異常はないと診断された等の症状のある方は股関節の専門医を受診されることをお勧めいたします。
股関節の専門医を受診してからの治療の流れをご説明いたします。
- 受診
- 検査
- 生活指導
- 経過観察
- 治療方針の決定
1.受診
大学病院・総合病院等で股関節の専門医に受診をする際には紹介状が必要であったり、予約が必要である場合があります。
紹介状予約は地域医療連携制度の一環で、医療の機能分担を目的として採用されているシステムです。まずはかかりつけの医師に相談をして股関節の専門医に紹介状を書いてもらいます。
また、紹介状がない場合でも受診は可能ですので予約の際に症状を伝えるとともに紹介状がない場合の受診の仕方について各施設にお尋ねください。
2.検査
検査は、病院・医師によっても、また、症状によっても異なりますのでここでは一般的な検査方法をご紹介いたします。
①JHEQ(ジェイヘック)(日本整形外科学会股関節疾患質問票)
この質問票は、医師の診察前に患者さんの病状を把握するために待ち時間等を利用して患者さん自身の手で記入いただくものとなります。
②JOAスコア
股関節機能判定基準で医師による聞き取りで、評価が行われます。
③可動域検査
診察台で行われる検査で、患者さんが仰臥した状態で股関節を動かし関節の可動域をチェックします。一般的には、内旋外旋、内転外転等の可動範囲を調べます。
④レントゲン撮影
レントゲンにより関節の状態を撮影します。
3.生活指導
股関節症の診断がくだされるとまずは生活指導が行われるのが一般的です。
生活指導には、
①重たいものを持たない
②杖の使用
③体重の調整
等の指導が含まれます。
変形性股関節症の進行を遅らせるには、股関節にかかる負担を減免することが重要となるためです。また、変形せ股関節症は慢性疾患であるため自然治癒による改善は期待できないため日頃の生活習慣の中で患者さん自身が注意することがもっとも重要となります。
4.経過観察
生活指導を受けながら股関節の状態をみてゆきます。
この生活指導の中で、保存療法を行い経過を見てゆくこととなります。この保存療法で一定の効果が得られれば今後の治療方針に大きく影響することとなります。これまで保存療法では、慢性疾患である変形性股関節症の症状の進行を遅らせたり、改善したりすることは難しいと考えられてきました。しかし、近年ジグリングによる保存療法で症状の進行を遅らせたり、また、改善する例が数多く発表されるようになりました。
後述する関節温存術、人工関節置換術等の手術をしなくとも改善がみられる患者さんの症例が発表されるようになり、ジグリングの効能があらためて見直されてきています。これまで、一度股関節症と診断されればいずれは手術をしなければならないと思われていたことが、ジグリングにより改善できる患者さんが数多く存在することがわかってきたのです。この成果をより多くの医師、患者さんにお伝えすることが非常に重要であると考えます。
5.治療方針の決定
受診から生活指導、経過観察を経て股関節の状態、患者さんの環境に応じて手術による治療が選択されることとなります。手術は、関節温存術と呼ばれる生体関節を残し手術を行う方法と関節を人工関節に置き換える事項関節置換術に大別されます。
ジグリングを行うことによりこうした治療を避けることができる、または、症状の進行を遅らせることができ手術を先に延ばすことができた患者さんもおられます。
変形性股関節症=手術による治療ではなく、まずはジグリング等による生活指導、保存療法を行い経過観察を行います。その上でその後の治療方針の決定がなされることとなります。